刷り込み ページ1
『承知しました』
今日も俺の指示にそう答える。
無駄なことは話さないし
物音を立てず気配をさせない
そんな秘書のはずだったんだが
電話をしている声がすれば
誰からだろうと
手帳に書き込んでる姿があれば
何を書いてるんだろうと
姿や気配がなければ
どこで何をしてるんだろうと
その姿を常に確認している自分がいる。
ロマンスの匂いがするとか
火種がついた、と言われた。
ジンの言っていたように、
そういうことなのかもしれない。
彼女の顔が 最近とても可愛らしく見えるのも
そういう風に俺が見ているからなんだろう。
ただ、恋だと浮かれるつもりも、
そのことに振り回されるつもりもない。
こういうのは、ある意味思い込みだと思っている。
毎日のようにそばにいてくれて
心地よく身の回りのことをやってくれる。
言えば はいと返事をして
何でも自分のために動いてくれる。
自分の目の前にそんな異性がいたとしたら
好意をもつのは当然のことだ。
鳥の雛は、孵化して、はじめに見た動く対象に対して、
愛着行動や追尾行動を示す
いわゆる刷り込みによる愛着
これもそんな類いのことなんだろう。
秘書である彼女に そんな感情をもって接するのは
仕事に悪影響だとわかっている。
『社長 お昼です』
今日もデスクに置かれた弁当箱。
『どうぞ』
温かいお茶とともに出てくる。
こんなことまでしてもらっているから、
愛着が起こるのかもしれない。
NJ「はぁ」
『どうかされたんですか？』
NJ「いや、Aさんも食べてきて」
彼女を休憩に向かわせて
一人弁当箱と対峙する。
これはただの弁当だ。
コンビニで買った 出来合いの弁当だ
そうイメージしてから食べるようにしよう。
プルコギか
野菜がたっぷり入っている。
NJ「‥‥美味いな」
今日もうまい。
よくできたコンビニ弁当だ。
『失礼します』
別の場所でお昼を食べているはずの彼女が
入ってきた。
『すみません忘れていました。
今日はデザートがあるんです。よかったらどうぞ』
弁当箱の横に カラフルなゼリーのようなものが置かれた。
『では失礼しました』
ああ 結局また 刷り込まれてしまった。
このおいしい食べ物と彼女の笑顔に
俺は幸せを感じてしまう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 623人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ごまきち(プロフ) - pumpkinさん» ありがとうございます☺ナム作品少ないですよね。こんなに素敵なのに。 (3月26日 22時) (
レス) id: c5c252a9c5 (このIDを非表示/違反報告)
ごまきち(プロフ) - Juriさん» こちらこそありがとうございます☺負のループわかりますよ〜 (3月26日 22時) (レス) id: c5c252a9c5 (このIDを非表示/違反報告)
ごまきち(プロフ) - メグさん» ありがとうございます☺楽しみにしていただけて感謝(T_T) (3月26日 22時) (レス) id: c5c252a9c5 (このIDを非表示/違反報告)
pumpkin(プロフ) - ナムさん書いてくれる方が少ないのでめっちゃ嬉しいです！！いつも楽しませていただいてます〜 (3月26日 10時) (レス) @page50 id: 3dc2269bbe (このIDを非表示/違反報告)
Juri(プロフ) - 負のループにハマる事もありますが、ごまきちさんのストーリーで抜け出してます🔁いつもありがとうございます🫶 (3月26日 7時) (レス) @page50 id: d6e934d8eb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ごまきち
| 作成日時：2024年3月9日 5時
