記憶と匂い (ページ12)

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医師「最近の調子はどうですか？」

「特に何も変わりありません」

今日は半年に１度の病院の日

医師「余談ですけど・・
先日 Aさんと彼、ジミン君が
一緒に歩いているのを見かけましたよ」

「ぁっ、、そうでしたか
気が付かなくて・・すみません」

先生はジミンが毎日病院に来て
私を励ましてくれていたのを知っている

医師「とても楽しそうに歩いてましたね」

先生にそう言われて
少し照れ臭くなった

医師「ちょっと質問してもいいですか？
彼と一緒にいてもやっぱり失った記憶が
戻ればいいなと思いますか？」

軽く聞かれたけれど
私はすぐに返事ができなくて黙った

医師「ごめんなさい
そんなに深く考えないで下さい
ただ、未来だけ見えてる２人だから
彼と居てAさんが失った記憶が必要だと思う事
あるかなとって」

・・・・先生の質問には結局最後まで答えられず
私は診察室を出た・・・

その後精算を待つ間も
病院を出て広い中庭を歩きながらも
私はずっとずっと
出ないと分かっている答えを考えていた

どうしても記憶が戻って欲しくて
ずっと泣いていた日々

あの日々からジミンが私を救ってくれた

でも・・・あの日から
記憶が戻らなくていいと思ってた訳じゃない
だけど
記憶が戻って欲しいと強く思ってた訳でも
ないかもしれないと思う。。

ただ言える事は
ジミンが居てくれたからこそ
未来を見る事が出来て
前を向いて過ごす事ができていたのは
間違いなかった

だから結局考えても答えは出なかった

・・・「ぁあ頭が重いかも・」

電車を降り家への帰り道
久しぶりに重くなった頭で１人商店街を歩く
不意に目に入った花屋さんのショーウインドウ
足を止め飾られた花を見つめた

白いバラが目に入って
退院した時の事を思い出す

ジャケットの中から
【ジャン！！】と効果音を付けて
ジミンが出してくれたのは１本の白いバラだった

。。。「花・・好きなんですか？」

「！！！！」

急に後ろから聞こえた声に視線を上げると
ショーウインドウに映る細く大きなシルエット
恐る恐る振り返った

「あっっ！！ごめん驚かせちゃったかな？」

私の顔を見て慌てて謝った人
その人はテヒョンのバイト先で会った
あの店長だった

「・・・っ・店長さん？」

彼はあの時と同じく優しく微笑んでくれた