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「明日仕事ならもう帰って寝なさい」


内見の話が終わると、ユンギが立ち上がりながら私の腕を引っ張り上げて言った。
引っ張り上げられたから私も一緒に立つしかなかった。

それにしても急に帰れって。
まだスコーンだって半分しか食べてないし、時計を見たら十時半くらいなのに。
酔って寝てしまった時だってそんな事言わなかったのに。

とはいえ、帰らない理由もない。
だからユンギに腕を引っ張られたまま、気付けば玄関で。


「ユンギさん、疲れてるんですね、私は大人しく帰りますんで休んでください」


半分自分に言い聞かせ、半分は急に帰宅を促したユンギへの嫌味だ。
クロックスを履いた私にユンギが'いや'と。


「別に疲れてるわけじゃないけど」


飄々と言う。
が、不思議なのは私の腕を掴んだままだ。


「帰れないから離して下さいよ」


矛盾を指摘すると、少し首を左に傾けたユンギの目に玄関の電気が反射して一瞬光った。


「ほんとは帰らせたくないけど、今じゃない(・・・・・)から、帰そうとしてんの、分かる?」


その後でこれだ。
虎視眈々。
そういう事なんだろうか。

ドラマチックな引き止め方はしないけれど、まるで平然と何でもない事の様にとんでもない事を言った。
それからユンギの手が離れて、そのまま私の頭をわしわしと乱暴に撫でた。


「今はこれだけ、あとは(・・・)後で」


簡単に私の心臓を掻っ攫った。
二回も。
そんな事を言われたら、"帰らない"なんて言えないし"帰りたくない"とも言えない。

どちらに転んでもとんでもない事しかないからだ。


「おやすみ」


「、おやすみなさい」


ヒラヒラと白い手を少し気怠そうに振るユンギに、私も同じ様に返して部屋を出た。

それからすぐ隣の自分の部屋に戻った訳だけれども。


「今じゃない?あとで?何それ…!」


玄関に入ってドアを閉めるや否や膝から崩れ落ちて、しゃがみ込んだまま暫く動けなかった。
眠りに落ちるまで別れ際のユンギが何度も何度も脳内で再生された。

そのおかげで、寝たのは結局日付が変わってからだった。

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かむ(プロフ) - にゃんさん» 最後まで読んで頂きありがとうございます🥹しかも新しいのまで!何回でも読み返して下さい!笑 (4月2日 15時) (レス) id: 5dfe42fd36 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - ユンギさんのお話最高でした!!最高すぎるのでもう一度読み返しに行ってきます!!(今更新中のお話もとても楽しく読んでます!私の日々の楽しみです!) (4月2日 12時) (レス) id: b48cf01a74 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - u512さん» 私のペンになんて嬉し過ぎます🥲✨私もいつも終わらせたいような終わらせたくないような気持ちで書いてます!(笑)最後まで読んで頂きありがとうございます🥹 (4月1日 10時) (レス) id: fb7c0dcb39 (このIDを非表示/違反報告)
u512(プロフ) - やはり最高です‼️‼️かむさんペンになってしまいました‼️一生終わらないで欲しいと毎度思ってます‼️最強に拗らせられました‼️‼️これからも楽しみにしています🥹✨ (4月1日 9時) (レス) @page34 id: 37a21340a3 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - 苺あめさん» 見てきたかのようななんて嬉しいです🥹こちらこそ読み続けて頂いてありがとうございます! (3月31日 20時) (レス) id: 03d417d136 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月27日 23時

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