行ったり来たり行き止まり[2]

52 ページ2

"隣人や近隣住民とはあまり鉢合わせする機会がない"
というのが元々の正しい姿。

だから今までが特殊だった。
やけに仲良くなってお互いの家を行き来して、何かを食べたり何かを贈ったり。

それが無くなるだけ。
本来の隣人同士のあるべき姿、に。


そう思うのは簡単だけれど気持ちは当然ついて行かない。
でも私とドユンの関係に対する誤解を解くためにユンギに話す事も出来ない。
"関係ない"から。

悲しい。
悲しくて苦しい。
せめてこんな形じゃなく、隣人なんかじゃなく。
決して手の届かない、認識さえされない、蚊帳の外からただのファンになれれば良かったのに。


『私にはこの家に住むのはまだ無理そう、誰かに貸すなり売るなりして』


父親にそうメッセージを送信した。

馬鹿娘と罵られそうだが、それが事実だからどんな罵倒でも受け止める次第だ。
家を持て余すなんて嘘をついて、本当はユンギの隣に住んでいられないから、なのに。



ユンギとは本当に、面白いくらい顔を合わせなくなった。
それでもたまに物音がしてユンギがいると思うだけで切なくなった。

例え隣人だとしても相手がいる人の家に頻繁に上がり込む事も、こちらに呼ぶ事も出来ないわけで。
料理を持って行くなんて事も。

今までがどれだけ恵まれていたか。


ーーー♩


どうなるか分からないけれど、父親の返事を待たずに不動産情報を検索し始めた時。
インターホンが鳴った。

インターホンの画面を見ると見た事のない男。
荷物の配達？


「はい…どちら様ですか？」


不審に思いつつも一応応答する。
モニターの中の男はバケットハットを被っていて顔がよく見えない、でも、若そうな…


「あ、あー…あの、ユンギヒョンの友達、いや違うな、あーあ！メンバーです！ユンギヒョンと同じ」


"メンバー"という言葉をオウム返しすると'はい'と元気な迷いのない声が返ってきた。


「ジョングクって言うんですけど、分かります？」


分からない、と言えない。
分かる、分かり過ぎて急に緊張が走った。
BTSファンの同期がヤンコチが云々の時にジョングクとユンギは…って話してたのを覚えている。

ジョングクが私に一体何の用が…！

53→←51

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す