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「今、鳴らした?」
自分の部屋のドアを中から誰かが開けたのかと思った。
でも早とちりだった。
ユンギがユンギの部屋のドアを開けた音だったのだ。
半身をドアから出してるユンギの髪は相変わらずポサポサで完全に"プライベート"の姿だ。
「もしかして、寝てました?」
それに半袖のTシャツにスウェット姿で、出てくるのがやや遅めだった事を加味してそう尋ねる。
「いや、ちょっと仕事してたから」
寝てたわけではなかったらしい。
じゃあ尚更良かった。
'これ'と少し前のユンギと同じ様に袋を差し出すと、片足で器用にドアストッパーを下ろしたユンギが私と袋を交互に一回ずつ見て何も言わず袋を手にした。
ユンギのその手が意外と骨っぽくて男らしい手をしているって気付く。
「チキンの匂いがする」
「そうです、チキンです」
「なんで急に?」
「こないだくれたから、お返しに。あーでも、ユンギさんがくれた時と同じで半分しか入ってないですけど」
静かな通路に私とユンギ、と、会話。
それから微かなチキンの匂い。
私の言葉を最後まで聞くと何度か目をシパシパとさせたユンギがぷふっと吹き出した。
それからまた髪を揺らしてうんうんうんって小刻みに頷いて。
「ありがと、お腹空いてたから貰うわ」
目を細めてまた笑った。
チキンの匂いしかしなかったのに、それに紛れて別な香りがした、気がした。
「Aー」
"この匂い何だろう"なんて変態みたく探ろうとしたのだけれど、誰かに呼ばれて果たせず終わる。
振り向くとドユンがドアから顔を覗かせていて、ぎこちなくユンギに会釈をした。
「じゃ、私帰りますね」
私の引越し祝いなのに主役が油を売っててどうする。
ユンギに軽く会釈してドユンに中に入れと手でアクションして見せる。
そして部屋に入る前にもう一回ユンギに"じゃあ"なんて言おうとしたのに。
「バイバイ、A」
ユンギに先を越されてしまった。
今、私の名前を呼んだ…な?
静かに閉まったユンギのドアを見つめたまま、その場に立ち尽くす私をドユンがまた不思議そうな顔で見ていた。
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かむ(プロフ) - サマンサさん» 彼には平然と煽ってもらいたくてこうなりました😂 (3月27日 19時) (レス) id: 03d417d136 (このIDを非表示/違反報告)
サマンサ(プロフ) - 煽り上手なユンギ痺れます...! (3月27日 17時) (レス) @page43 id: 950212af01 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - 苺あめさん» こちらこそ目を通して頂きありがとうございますㅜㅜ少しのんびり更新ですがにはなってますが是非最後までお付き合いいただけたら嬉しいです! (3月26日 12時) (レス) id: e587d3099d (このIDを非表示/違反報告)
苺あめ(プロフ) - かむさん、ユンギのお話をありがとうございます。ユンギと隣の彼女の関係が出会ってから急激に近くなって、でも元カノも出てきたりして、この先の展開が楽しみで仕方ありません。毎回、更新を楽しみにしています。これからも頑張って下さい。 (3月26日 10時) (レス) @page36 id: 3780d68ff4 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - にゃんさん» わーありがとうございます🥹そしてユンギペンさま…ご期待に添えられるかわかりませんが、良ければ最後までお付き合い頂けたら嬉しいです🥹 (3月21日 9時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月20日 20時