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どれくらいの時間そうしていたのか。
他人から見たらほんの一瞬なんだろうけど、私からしたらその一瞬が長く色んな事を考えた時間で。
ユンギの目は澱みなく私の目を真っ直ぐ見ていて。
の…
「…飲むなってカトクで言われました!」
ユンギの手を振り払った。
すぽんと音が聞こえそうなくらい、いとも簡単に手が抜けて'え'なんて言ってしまったら
「ばーーーーか」
ユンギがベッと舌を出してそう言って、私の頭をぐりぐりと強めに撫でた。
撫でた?いや、雑に撫で回した、だ。
髪の毛がぐしゃぐしゃになって、それを整える私になんか構わないユンギは
「配達届いたかどうか携帯見て」
と、ダイニングを通り越して半ば身を投げるようにソファに腰を下ろした。
私の心臓がまだ元通りとは言えない状態なのに、ユンギは全くの通常運行。
腑に落ちない。
腑に落ちないけど追及する勇気はないから、ユンギに言われた通り配達が来たか確認する為に、手にしていたコップをダイニングに置いた。
ポケットから出してみた携帯の画面に丁度配達完了の通知が来たところだった。
「いただきます」
二人揃って礼儀正しく手を合わせて食べ始めるのは、もはやいつもの事だ。
その時のユンギが微かに目を瞑るのが見たくて、私は目を閉じない。
でもそんな事ユンギは知るはずもなく、私にそれをつっこむ事もない。
「何?」
と、今現在みたいに言われる事があるとすれば、私が少し長く見過ぎた時だけだ。
だから首を振って私が慌てて目を逸らして、この流れは終わりなんだけど。
「食べてみ」
今回は違った。
真向かいのユンギからヤンコチが刺さった串が私に向けられたからだ。
しかもユンギの食べかけ。
「いや、ユンギさんが食べてくださいよ」
「いや美味いから食べてみって、あ、汚くて食べれないって?そういう」
「食べます食べます、食べれます」
そういう意味じゃないんだけど…
そう思いつつ恐る恐る少し身を乗り出して一口。
それから直ぐにユンギがふっと小さく笑って
「ほら、美味いじゃん」
まだ何も言ってないのに。
でもユンギの言葉通り今まで食べたヤンコチの中で群を抜いて美味しいと思った。
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かむ(プロフ) - サマンサさん» 彼には平然と煽ってもらいたくてこうなりました😂 (3月27日 19時) (レス) id: 03d417d136 (このIDを非表示/違反報告)
サマンサ(プロフ) - 煽り上手なユンギ痺れます...! (3月27日 17時) (レス) @page43 id: 950212af01 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - 苺あめさん» こちらこそ目を通して頂きありがとうございますㅜㅜ少しのんびり更新ですがにはなってますが是非最後までお付き合いいただけたら嬉しいです! (3月26日 12時) (レス) id: e587d3099d (このIDを非表示/違反報告)
苺あめ(プロフ) - かむさん、ユンギのお話をありがとうございます。ユンギと隣の彼女の関係が出会ってから急激に近くなって、でも元カノも出てきたりして、この先の展開が楽しみで仕方ありません。毎回、更新を楽しみにしています。これからも頑張って下さい。 (3月26日 10時) (レス) @page36 id: 3780d68ff4 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - にゃんさん» わーありがとうございます🥹そしてユンギペンさま…ご期待に添えられるかわかりませんが、良ければ最後までお付き合い頂けたら嬉しいです🥹 (3月21日 9時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月20日 20時