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隣。
反対の隣かと思えれば良かったのだけれど、その声は多分さっき聞いた低い声と一致している。
なんで玄関に来ちゃったんだろう、なんて大人として良くない後悔に無音で顔を歪ませた。
でもその後すぐに一呼吸で自身を落ち着かせて
「…何ですか」
玄関のドアを開けた。
やっぱり。
ユンギだ。
しかも遠くからは小さく見えたのに、近くで見ると私より10センチ以上は高くて見下ろされてるのがまたちょっと癪に障る。
「あげる」
ぶっきらぼうに差し出された袋から、ふわっとチキンの匂いがした。
その袋もよく見たらチキンの店の物だ。
「、あげるってなんで」
「食べ切れなかったから、まぁ半分もないけど」
ユンギの円な目は私を見たりチキンを見たり忙しない。
受け取って良いものかどうか。
迷ってるうちにユンギが'ん'とまた少し近付いて袋を近付けてきて
「腕痛いから、早くして」
勝手に持って来て勝手な事を言ってのけた。
でもそう言われたらチキンの香ばしい匂いも相まって受け取るしかなくて、紙袋を両手で受け止めた。
そしたら何に納得したのか'うん'と頷いたユンギはそのまま自分の部屋の方へ。
いや、ちょっと。
「ユンギ…さん!」
足で玄関のドアを止めて不意に呼び止めてしまった。
もう自分の部屋へと続くドアノブに手を掛けた状態のユンギが私の方を見る。
「ありがとうございます、これ」
どんな形であれ、どんな相手であれ。
貰ったからにはお礼は言わないと。
"これ"と言ったのはチキンの事で、ユンギがしたみたいに軽く持ち上げて見せて言った。
ユンギの口角が微かに上がったように見えた。
「半分もないって言ったのに」
'律儀じゃん'って言ったユンギが、笑った。
数十分前の笑いとは違う方のやつ。
呆然とする私に手をヒラヒラと振って、ユンギは自分の家の中に消えていった。
さっき見た画像の中にあった笑顔と全く同じ笑顔で、改めて"本物だ"なんて。
ユンギから貰ったチキンは本当に半分もなかったけど、美味しかったしお腹より心が満たされた気がした。
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かむ(プロフ) - サマンサさん» 彼には平然と煽ってもらいたくてこうなりました😂 (3月27日 19時) (レス) id: 03d417d136 (このIDを非表示/違反報告)
サマンサ(プロフ) - 煽り上手なユンギ痺れます...! (3月27日 17時) (レス) @page43 id: 950212af01 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - 苺あめさん» こちらこそ目を通して頂きありがとうございますㅜㅜ少しのんびり更新ですがにはなってますが是非最後までお付き合いいただけたら嬉しいです! (3月26日 12時) (レス) id: e587d3099d (このIDを非表示/違反報告)
苺あめ(プロフ) - かむさん、ユンギのお話をありがとうございます。ユンギと隣の彼女の関係が出会ってから急激に近くなって、でも元カノも出てきたりして、この先の展開が楽しみで仕方ありません。毎回、更新を楽しみにしています。これからも頑張って下さい。 (3月26日 10時) (レス) @page36 id: 3780d68ff4 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - にゃんさん» わーありがとうございます🥹そしてユンギペンさま…ご期待に添えられるかわかりませんが、良ければ最後までお付き合い頂けたら嬉しいです🥹 (3月21日 9時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月20日 20時