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"ユンギのファン"
と声を大にして名乗ってもいいのだろうか。
いや、それはそれでなんか少し気恥ずかしくて言えそうにない。
ていうか、ファンなのにポスターが欲しいとかCD集めようとか考えてない時点で言えたもんじゃない。
私にはひっそりと曲を楽しむくらいが性に合ってるのかも。
靴を履いたユンギが私の部屋を出る間際。
「もしまた来ても受け取らなくていいから」
目線を自身の手にぶら下がる白い袋に向けて言った。
そうは言われても
「でも、断れそうな雰囲気じゃないっていうか…」
当時の女の人の様子を思い返してみる。
追い返すのは良心に欠けていると思い込んでしまう程、あの申し訳なさを前面に押し出した感じ。
自分の眉間に強く力が入っているのが分かる。
でもユンギは'いいから'と。
「Aがやる事じゃないから」
…確かにそれもそうだ、と言わざるを得ない言葉を続けた。
"ただの隣人が"って事よね。
そりゃそうだ。
だからとりあえず二回頷くとそれを確認したユンギも一回だけ無言で頷いて
「じゃ、おやすみ」
低く穏やかな声色でそう言って、隣のドアへ帰って行った。
静かにドアが閉まる音が聞こえたのを、自分の玄関の中で立ち尽くして聞いてたのは"ちゃんと帰ったかなー"なんて遊び心でではなく。
「、ユンギ…恐ろしい…」
"おやすみ"の後で私の頭を二回軽く叩いたから、それで精神を引っこ抜かれたのだ。
大袈裟な言い方だけれども、だから"恐ろしい"なんて合わない独り言が口から漏れた。
どう考えてもそんな事しそうにないのに。
意外過ぎて。
心臓が馬鹿に騒がしい、まるでファン。
やっとそれらしい実感がした。
リビングに戻るとローテーブルの上に置かれた焼き菓子の入った小さな袋に目を取られる。
ソファに座って袋を逆さまにして見ると、中から個包装の焼き菓子達がテーブルの上に散らばった。
一個だけ付箋が付いた物がある。
フロランタンだ、美味しそう。
時間も考えずに開けて一口齧ると、割とほろ苦いキャラメルで私好み。
アーモンドの食感も良い。
"민윤기 010-××××-××××"
"
付箋のメモ書きの衝撃度は今年一番と言っても過言ではなかった。
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かむ(プロフ) - サマンサさん» 彼には平然と煽ってもらいたくてこうなりました😂 (3月27日 19時) (レス) id: 03d417d136 (このIDを非表示/違反報告)
サマンサ(プロフ) - 煽り上手なユンギ痺れます...! (3月27日 17時) (レス) @page43 id: 950212af01 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - 苺あめさん» こちらこそ目を通して頂きありがとうございますㅜㅜ少しのんびり更新ですがにはなってますが是非最後までお付き合いいただけたら嬉しいです! (3月26日 12時) (レス) id: e587d3099d (このIDを非表示/違反報告)
苺あめ(プロフ) - かむさん、ユンギのお話をありがとうございます。ユンギと隣の彼女の関係が出会ってから急激に近くなって、でも元カノも出てきたりして、この先の展開が楽しみで仕方ありません。毎回、更新を楽しみにしています。これからも頑張って下さい。 (3月26日 10時) (レス) @page36 id: 3780d68ff4 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - にゃんさん» わーありがとうございます🥹そしてユンギペンさま…ご期待に添えられるかわかりませんが、良ければ最後までお付き合い頂けたら嬉しいです🥹 (3月21日 9時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月20日 20時