18 ページ18
どんな理由でユンギがそんな表情になったのか、私には知る由もない。
ただ、何か思い考える様にユンギが下唇を少し噛んで袋を見つめて静かに息を吐いたのだけは分かった。
「ユンギさん」
だから敢えて私から先に口を開いて
「満月好きなんですよね?今日ですよ、空見ました?」
まだ開け放たれたままの大きな窓を指差す。
それからユンギには何も言わず、ベランダに向かった。
入浴したての時は涼しいなんて感じた風が、今は少し肌寒く感じる。
スウェットの袖を無理矢理掴んで、そこに手を入れると少しは違う。
寒いわけではない、耐えられるレベルだ。
それから程なくして、ユンギがベランダに出る一歩手前まで来てそこで足を止めた。
「満月好きって、どこで仕入れた情報?」
私ではなく満月を見てるユンギが目を細めている。
「会社の同期にBTSのファンがいて、その同期が教えてくれたんです」
「へぇ、なんでそんな事になったの?メンバーの話でもしてた?」
気まずい質問だ。
そう思ったが、今回は咄嗟に機転の利いた誤魔化しが思い浮かばなくて
「…私が、ユンギさんの歌聞いてて…」
少し小さめの声で真実を呟いた。
でも私はユンギに背を向けている状態なわけで、それが聞こえなかったらしい。
「何?!なんて?!」
「だから、私がユンギさんの歌を…」
「あのさ、ここで歌ってた時みたいにもう少し大きい声で喋ってくれないと…」
「だからー!私がユンギさんの歌を聞いてたからって言ったんですよ!これで聞こえましたか?!聞こえましたよね?!」
ヤケクソだった。
かなりのボリュームの声がこのアパートの敷地内はおろか漢江まで響いたような気がした。
警察でも呼ばれそうな程。
ユンギが一瞬目を丸くして。
その後で顔をくしゃっとさせて
「なんだよそれ、笑」
眉毛まで下げて笑いながらそう言った。
なんだよそれって。
そんなの私の台詞じゃないか。
さっきまでと全く違うどころか、そんな思い切り笑うなんて。
月明かりを浴びているユンギのグレーの髪まで楽しそうに揺れてたから良しとするけど。
553人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かむ(プロフ) - サマンサさん» 彼には平然と煽ってもらいたくてこうなりました😂 (3月27日 19時) (レス) id: 03d417d136 (このIDを非表示/違反報告)
サマンサ(プロフ) - 煽り上手なユンギ痺れます...! (3月27日 17時) (レス) @page43 id: 950212af01 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - 苺あめさん» こちらこそ目を通して頂きありがとうございますㅜㅜ少しのんびり更新ですがにはなってますが是非最後までお付き合いいただけたら嬉しいです! (3月26日 12時) (レス) id: e587d3099d (このIDを非表示/違反報告)
苺あめ(プロフ) - かむさん、ユンギのお話をありがとうございます。ユンギと隣の彼女の関係が出会ってから急激に近くなって、でも元カノも出てきたりして、この先の展開が楽しみで仕方ありません。毎回、更新を楽しみにしています。これからも頑張って下さい。 (3月26日 10時) (レス) @page36 id: 3780d68ff4 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - にゃんさん» わーありがとうございます🥹そしてユンギペンさま…ご期待に添えられるかわかりませんが、良ければ最後までお付き合い頂けたら嬉しいです🥹 (3月21日 9時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かむ | 作成日時:2024年3月20日 20時