13 ページ13
二人分なら家にある鍋ごと持ってくれば良かった。
「これじゃ足りなくない?鍋ごと持って来なよ」
キッチンでタッパーを取り出したユンギが私の心を読んだ。
いや、単なる偶然だ。
でも事実、私が思った事に相違はないから一度家に戻って鍋ごとユンギの部屋に移動する。
隣に住む家政婦か、私は。
そう思った事と、部屋着のままで両手で鍋持った女が家に来たところで、そりゃあ何にも起こらないわと納得してしまって。
少し緊張してたのだけれど、鍋をユンギの家のインダクションの上に置く時には消えて無くなっていた。
「ここに置いて行くんで、残ってもいいし、食べ終わったら返してくれればいいです」
温まるのを待つ間、隣に立つユンギに鍋を指差して言う。
ユンギはこくこくと小刻みに頷いた後、ジュモクパプのタッパーを徐に開けて一口齧った。
「いや、お腹空いてるならどこかに座っ」
「歌は微妙だけど料理は上手いじゃん」
もくもくと膨らんだ頬を動かしながらユンギが褒め言葉を口にした、けれども
「…歌のくだりは余計だし、わざわざ私の話遮ってまで言わなくていいです」
思った事をそのまま口に出すと'確かに'と言ったユンギがそのまま二口目を頬張った。
少し面倒だったけれど、スパムと卵入れたジュモクパプにして正解だったようだ。
何しろご飯を炊く段階からやった事が、一番良くやったと思う点だ。
温まったスープを鍋ごとダイニングテーブルの上に置く。
シックな薄いグレーのテーブルに黒い鍋敷きがよく映える。
「いただきます」
さっきジュモクパプをつまみ食いしたのに、今度はちゃんと両手を合わせてまで。
柄の長い金属製のスプーンでスープを掬うと、大きめに口を開けて具ごと食べた。
食べた、本当に。
そんな事を考えてた私の目は気付かぬうちにユンギを注視していたようで。
「食べにくいんだけど、何?」
怪訝な表情でそう言われて、自分で作ったジュモクパプにやっと手を付けた。
緊張はなくなったはずなのに、正直味なんかよく分かんなかった。
ただひたすら黙々と私の作った食事を口へと運ぶユンギと、この静かな天気の良い昼下がりが不思議で。
553人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かむ(プロフ) - サマンサさん» 彼には平然と煽ってもらいたくてこうなりました😂 (3月27日 19時) (レス) id: 03d417d136 (このIDを非表示/違反報告)
サマンサ(プロフ) - 煽り上手なユンギ痺れます...! (3月27日 17時) (レス) @page43 id: 950212af01 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - 苺あめさん» こちらこそ目を通して頂きありがとうございますㅜㅜ少しのんびり更新ですがにはなってますが是非最後までお付き合いいただけたら嬉しいです! (3月26日 12時) (レス) id: e587d3099d (このIDを非表示/違反報告)
苺あめ(プロフ) - かむさん、ユンギのお話をありがとうございます。ユンギと隣の彼女の関係が出会ってから急激に近くなって、でも元カノも出てきたりして、この先の展開が楽しみで仕方ありません。毎回、更新を楽しみにしています。これからも頑張って下さい。 (3月26日 10時) (レス) @page36 id: 3780d68ff4 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - にゃんさん» わーありがとうございます🥹そしてユンギペンさま…ご期待に添えられるかわかりませんが、良ければ最後までお付き合い頂けたら嬉しいです🥹 (3月21日 9時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かむ | 作成日時:2024年3月20日 20時